2015年12月31日に発足したAEC=ASEAN経済共同体。人口6億、GDP2兆ドルを超える巨大経済圏が誕生しました。
近い将来、域内のヒト/モノ/カネの動きを自由化すること で、内需、貿易、投資の拡大など、大きな経済効果が期待されています。
以前医より建設されていたのは、オレンジ色のラインの『東西経済回廊』と、緑のラインの『南北経済回廊』です。
そして2015年に大河メコン川に架かるネアックルン橋が開通し、赤いラインの『南部経済回廊』が完成しました。これにより、ホーチミンからバンコクまで、1本の道路で結ばれることになりました。
タイとカンボジアを比較した場合、国民1人あたりGDPはタイが5,742.28$に対してカンボジアは1,168.04$。経済規模からするとタイへの進出の方が内需を見込めるため有利に見えますが、タイには外資規制や外国人就労に関して厳しい制限がかかっています。
※国民1人あたりGDP 出典:http://ecodb.net/ranking/imf_ngdpdpc.html
タイへの進出
外国人事業法(1999年改正、2000年3月施行)に基づき、規制業種を3種類43業種に分け、それらの業種への外国企業(外国資本50%以上)の参入を規制している。
【第1表(9業種)】外国企業の参入が禁止されている業種
(1) 新聞発行・ラジオ・テレビ放送事業
(2) 農業・果樹園
(3) 畜産
(4) 林業・木材加工(天然)
(5) 漁業(タイ海域・経済水域内)
(6) タイ薬草の抽出
(7) 骨董品(売買・競売)
(8) 仏像および僧鉢の製造・鋳造
(9) 土地取引
【第2表(13業種)】国家安全保障または文化、伝統、地場工芸、天然資源・環境に影響を及ぼす業種として外国企業の参入が禁止されている業種(ただし、内閣の承認により商務大臣が許可した場合は可能)
<第1章(安全保障関連ビジネス)>
(1) 製造・販売・補修(銃・銃弾・火薬・爆発物およびそれらの部品、武器および戦闘用船・飛行機・車両、すべての戦争用備品・部品)
(2) 国内陸上・海上・航空運輸および国内航空事業
<第2章(文化・工芸に影響を与えるビジネス)>
(3) 骨董品・民芸品販売
(4) 木彫品製造
(5) 養蚕・絹糸・絹織布・絹織物捺染
(6) タイ楽器製造
(7) 金銀製品・ニエロ細工・黒金象眼・漆器製造
(8) タイ文化・美術に属する食器製造
<第3章(環境・天然資源に影響を与えるビジネス)>
(9) サトウキビからの精糖
(10) 塩田・塩土での製塩
(11) 岩塩からの製塩
(12) 爆破・砕石を含む鉱業
(13) 家具および調度品の木材加工
【第3表(21業種)】外国人に対して競争力が不十分な業種であるとして外国企業の参入が禁止されている業種(ただし、外国人事業委員会の承認により局長が許可した場合は可能)
(1) 精米・製粉
(2) 漁業(養殖)
(3) 植林
(4) ベニア板・チップボード・ハードボード製造
(5) 石灰製造
(6) 会計サービス
(7) 法律サービス
(8) 建築設計サービス
(9) エンジニアリングサービス
(10) 建設業(ただし、外国人投資が5億バーツ以上で特殊な技能を要する建設(インフラ、通信等)、その他の省令で規定された建設業を除く)
(11) 代理・仲介業(ただし、証券・農産物の先物取引、金融商品売買に関するサービス、同一グループ内の生産に必要な財取引、外国人資本1億バーツ以上の国際貿易仲介、その他省令で規定された代理・仲介業を除く)
(12) 競売(骨董品・美術品以外の国際間競売、その他省令で定める競売)
(13) 伝統的な国内農産物または法令で禁止されていない農産物の国内取引(ただし、農産物の先物取引を除く)
(14) 最低資本金1億バーツ未満または1店舗あたり最低資本金2,000万バーツ未満の小売業
(15) 1店舗あたり最低資本金1億バーツ未満の卸売業
(16) 広告業
(17) ホテル業(ただし、マネージメントを除く)
(18) 観光業
(19) 飲食物販売
(20) 植物の繁殖・品種改良
(21) その他サービス業(省令で定めるものを除く)
外資比率が50%を超える企業は、外国人事業法により上述(「規制業種・禁止業種」)の43業種への参入が禁止・規制される。ただし、一部例外もあり。
<外国人就労規制>
39業種について外国人就業禁止。通常外国人1人の労働許可を取得するには、原則的にその会社の資本金の払込額が最低200万バーツ必要。
I. 禁止職種
以下の39業種については、その地域を問わず、外国人が商行為または収入を目的として就労することをタイの法律で禁じられている。
- 肉体労働
- 農業・畜産業・林業・漁業への従事(ただし、特殊技能業種、農業管理、海洋漁業船舶における単純肉体労働を除く)
- レンガ職人、大工その他の関連建設業者
- 木彫品製造
- 自動車などの運転や運搬具の操縦(ただし、国際線のパイロットを除く)
- 店員
- 競売業
- 会計業としての監査役務の提供(ただし、臨時的な内部監査を除く)
- 貴石類の切削や研磨
- 理容師、美容師
- 織物製造
- アシ、藤、麻、竹を原料とするマットやその他の製品の製造
- 手すき紙製造
- 漆器製造
- タイ特産楽器製造
- 黒象眼細工
- 金・銀その他の貴金属製品の製造
- 石工
- タイ特産玩具の製造
- マットレス、上掛け毛布類の製造
- 托鉢用鉢の製造
- 絹手工芸品の製造
- 仏像製造
- ナイフ製造
- 紙製・布製の傘製造
- 靴製造
- 帽子製造
- 仲介業、代理店業(ただし、国際貿易業務を除く)
- 建設、木工に関し、企画、計算、組織、分析、計画、検査、監督助言をする業務(ただし、特殊技能を必要とする業務を除く)
- 建設業における設計、図面引き、コスト計算、助言をする業務
- 服仕立業
- 陶磁器類の製造
- 手巻きタバコ
- 観光案内人および観光案内業
- 行商・露店業
- タイ字のタイプ
- 絹を手で紡ぐ業務
- 事務員、秘書
- 法律・訴訟に関する業務
<労働許可証>
(1) 外国人労働者を雇用しようとする企業がワークパーミットを取得するためには、外国人労働者1人に対して最低200万バーツの払込済資本金の登録を行う必要 がある。ただし、この規定はBOIによる投資奨励を受けた企業には適用されない。ワークパーミットは200万バーツの払込資本金ごとに外国人労働者1人に 対して発行される。なお、次の条件が満たされない限り、ワークパーミットを受領できる外国人の数は10人までとなる。
a. 雇用主が前年度に納めた収入税が最低300万バーツあること。
b. 雇用主が輸出業を営み、前年度に最低3,000万バーツ相当の外貨をタイにもたらしていること。
c. 雇用主が観光業を営んでおり、前年度に最低5,000人の外国人観光客をタイに呼び寄せていること。
d. 雇用主が最低100人のタイ人を雇用していること。
最低200万バーツの払込済資本金を持つ外国企業の雇用主の下で働く外国人が以下に該当する場合は、上記のワークパーミット受領可能な外国人の人数制限基準は適用されない。
a. タイ人が使えない、または使えるタイ人が非常に限られている技術を使える外国人であること。ただし、期限までに少なくとも2人のタイ人に技術の移転を行うものとする。
b. 時間制限のあるプロジェクトを達成するための専門技術を持つ外国人であること。
c. 一時的な契約でエンターテインメント・ビジネスに従事する外国人であること。
労働許可が一旦発行されると、その外国人はノン・イミグラントビザを1年間延長できる。同ビザは、同外国人が働く企業のタイ人労働者4人に対して1人分支給される。
(2) 貿易業務を行う外国法人の駐在員事務所で働く外国人で、本社が販売する商品の推奨を販売代理店や顧客に対して行うか、本社の新商品またはサービスに関する 広報を行うか、本社に対してタイ国内のビジネス動向を報告する場合、ワークパーミットは2人以内で許可される。本社のためにタイ国内で商品やサービスを購 入する相手を探すか、または本社のためにタイ製品の質的・量的管理の職務に携わる外国人は、最大5人まで当該職務についてのワークパーミット支給が許可さ れる。
ただし、駐在員事務所が本社のためにタイで商品やサービスの調達を行い、かつその本社が前年度に1億バーツ以上の商品やサービスをタイの業者に発注している場合には、この基準は適用されない。
労働許可が一旦発行されると、その外国人はノン・イミグラントビザを1年間延長できる。同ビザは、同外国人が働く企業のタイ人労働者1人に対して1人分支給される。
(3) 外国の法律に基づいて設立された多国籍企業で、タイに設置した地域事務所で働く外国人には最大5人までワークパーミットの支給が許可される。ただし、その 外国人が本社の代理としてサービスの提供に従事する、例えば、その地方に立地する支社やグループ会社に対する事業上の調整・監督、コンサルタント・人材開 発訓練サービス、財務管理、マーケティング管理、販売促進計画、製品開発、(本社からの支払いは別として)収入獲得手段ではない研究開発、およびその事務 所が立地する国でどんな個人や法人に対しても販売や貿易事業を行う権限を持たないことが条件である。ただし、前年度に1,000万バーツを超える経費をタ イで使った場合は、その事務所は上記の基準を免除される。
労働許可が一旦発行されると、その外国人はノン・イミグラントビザを1年間延長できる。同ビザは、同外国人が働く企業のタイ人労働者1人に対して1人分支給される。
(4) 特にサービス業に対して、ワークパーミットを要求する外国人が取締役である場合、取締役の中にタイ人が含まれていることがしばしば要求される。
(5) タイ法に基づいて設立され、国内外立地を問わずその関連会社または支店に対する管理もしくは技術的サービスまたはサポートサービスの提供を行う国際統括本 部(International Headquarters)の外国人労働者については、ワークパーミットは最大10人分支給される。
(6) タイ法に基づいて設立され、国外の法人に対し、商品、原材料、部品を購入・販売、または貿易に関連するサービスの提供を行う国際貿易拠点 (International Trading Center)の外国人労働者については、ワークパーミットは最大10人分支給される。
ただし、上記(5)の国際統括本部または(6)の国際貿易拠点の年間納税額が300万バーツ以上の場合には、必要に応じワークパーミットの最大支給数を増加させることが可能。
※上記出典:ジェトロホームページ(https://www.jetro.go.jp/)
カンボジアへの進出
タイと比較した場合、外国企業の参入障壁が低いのがカンボジアです。
・外資100%での法人設立が可能
・外国人に対する規制業種なし
という2つの点はタイと比較しても非常に有利です。
また、タイでは人件費の高騰ならびに、進出済み企業の多さから優秀な人材の確保が難しくなってきています。
サービス業や飲食業など、内需を見込んだ業種業態であれば進出に際しては工夫が必要ですが、日本との取引を前提としたオフショア開発などは近年進出が増えてきています。